イコライザー「音のかぶり」を画像イメージで考えてみる
前回の予告通り「音のかぶり」についてイメージ画像を用意してみました。
何かヒントが掴めるといいのですが。
前回の記事はこちら。
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「音のかぶり」を波形の画像イメージから考えてみる
まずは以下をご覧ください。
自分のオリジナル曲を参考に作った波形イメージです。あくまで自分の曲のものであり、「各楽器について一般的な波形」という意味ではないのでご注意を。
イメージにピックアップしたパートには特に理由はありません。何となく低音域、中音域、高音域と揃えてみたつもり。
「不要な低音をハイパスフィルターでカットする」意味とは?
始めに、ベースとギターを同時に鳴らしてみた場合について考えてみましょう。
ベースとギターの波形を重ねると、こんな形になりました。
この状態から、いつも行っている「不要な低音をハイパスフィルターでカットする」という作業について考えてみます。
具体的にはハイパスフィルターを調節し、音質が変わらない程度に低音をカットしていくわけです。
【※しつこいようですが画像はあくまでイメージ】
ポイントは音質が変わらない程度に、という部分。だからこそ「不要な」低音なんですよね。
どうでしょう。色が混ざっている面積がだいぶ減りました。
反面、よく見るとベースとギターを合わせた全体の面積はそれほど減少してはいません。この状態ならば音質にはそれほど変化がないのに、音源の聴き心地はスッキリとして聴こえます。
しかし、見ての通りギター単体での波形はかなり変わっているため、ソロで聴くととても軽い音になっているんです。
ここからさらにハイパスフィルターをかけ過ぎてしまうと…
ここまでカットしてしまうと全体での専有面積が減ってしまいますよね。こうなるとギターパートのソロはもちろん、全体で聴いた時も音質の変化が顕著になってきます。パート毎の音も悪い意味で分離してしまっている状態。
結論としては、ベースと音域が重複している部分(色が重なっている部分)はカットすべきで、それ以上はカットすべきでない、ということなのでしょう。
当たり前なんですけどね。
この当たり前の作業の中でわたしが改めて注目したのは、ギター単体で聴くと物足りなくなっているという事実は、違う楽器同士でもちゃんと音域をカバーし合っているっていう証拠ではないかということ。なかなかに美しい友情じゃないか。だからこそ合わせて鳴らすと音色の変化が気にならないわけで。
つまり、音質の変化がない範囲でカットするというのはそういう意味でも重要なんじゃないかと。
改めてまとめてみるとやっぱりこの作業、音のかぶりを解消する作業そのものですね。
引き続き他のパートも加えてみる
この調子で他のパートも加えてみましょう。
始めに掲載した通り、ハイハットって意外に低音域まで広がりがあるんです。なのでしっかりハイパスフィルターをかけた方が良さそう。
上がハイパス前、下がハイパス後です。
こんなにカットしているのに、ちゃんと調整できていれば音質にはあまり影響ないんですよ。音の重なりって不思議…ですが、こうして画像で見ると全体の専有面積はあまり変わっていないことから、なんとなく現象としては理解できる気がしますね。もちろんソロで聴くと薄すっぺら~い音になっており、聴けたもんじゃありません。
さらにピアノを加えます。
ピアノはその大部分が他のパートとカブってしまいました。
中低音域はギターに譲るとして、そのギターの隙間を縫うように中高音域をブースト。さらにベースの中音域をカットして全体の余白を作って。
あ、そういえば一番聴いてもらいたいボーカルがまだでしたね。遅まきながら加えてみましょうか。
…ね。
時すでに遅しとはこのこと。
音域全体に満遍なくかぶってしまい、今更もうどうしようもありません。やっぱりミキシングの順序ってとても重要だということが改めてわかります。
ちなみに、何のイコライジングも施さず、始めに掲載した波形を全て重ね合わせるとこんな感じになりました。
それぞれのパート本来の色よりも混色の方が多いのがパッと見でお分かりかと思います。
あくまでイメージ画像に過ぎませんが、この音源はさぞかし聴きにくいだろうなっていう感じがしますね。
「音のかぶり」を波形のイメージから捉えてみた結果【まとめ】
今回の記事で分かったことは大きく分けて以下の2点。
いずれもわたしにとっては大きな発見でした。
音のかぶりを解消する作業はあくまで音質が変わらない範囲で行う
不要な低音をカットする作業を通して、各パートの音域は互いにカバーし合っているということがわかりました。それが重複してしまっている部分が恐らく「音のかぶり」の正体です。
ここから解ることは、適正な範囲で音のかぶりをカットした場合、音質の変化は最小限になるはずだということ。
今まではカブッている部分(主に中音域)をカットし、スッキリと聴こえるように「音を軽くしてから混ぜる」的なイメージだったのですが、低音域での作業を考えるならばそれは間違いであった気がする。
重複している部分のみを削ることが出来れば、削った部分は他パートでカバーされるはずなので、主観的な音質はそれほど軽くならないはずだと思いませんか。
残念ながらわたしのイコライジングはいつもそうなっていますが…。
もちろん音質を変化させるということが目的のイコライジングなら別ですけどね。
少し話は変わりますが、先ほどから掲載してきた画像は実際の作業とはかなり違っています。
実際はパンなど左右の位相はもちろん、奥行きという概念もあるでしょ。本来なら2次元じゃなくて3次元のイメージなんですよね。
しっかりと互いのパートが合う形に成形することが出来れば、結果として箱の中の密度は100%。密度はしっかりと詰まっているのに各パートの住み分けが出来た音源が出来上がるはず。
もちろん完全な音域の住み分けは絶対に無理でしょう。
しかし、イコライジングを通して目指すイメージとしては、正解から遠くないはずだと思っています。
イコライジングの優先順位をはっきりさせておくべき
以前から書いていることですが、今回再認識しました。
イコライジングが3次元のパズルを作る作業である以上、やはり優先順位はめちゃくちゃ大事なんじゃないでしょうか。本来の形を活かすピースがあれば、そのピースに合わせて削らなければいけないピースもある。活かすピースの形によって削るピースの形が決まってくる。
…あ、だからさぁ、イコライジングって大きく分けて2種類の作業があるってことですよね。
活かすピースは自分好みの形にかっこ良く成形する。
それ以外のピースは活かすピースの形を踏まえてそれに合う形を作っていく(音のかぶりを取る)。
この作業の使い分けについても、各パートの優先順位を明確にしておかなくては今何をしているのかがわからなくなってしまいそう。
…っていうか、これもわたしがいつもなってるパターンのやつ。
というわけで、今日はここまで!
今回はわたしが思っていた以上の収穫がありました。
次回はこのロジックを元に、実験体2号のイコライジング(とコンプレッサー)をやり直してみようと思います。つまり「優先順位を今以上に意識する」ことと「音質を出来るだけ変化させず、重複した部分だけをカットするイコライジング」の2点です。
お楽しみに!